ロザリオアクセサリー作家
山添 亜理沙さん
「祈りの島、五島列島」を最も色濃く感じられる場所のひとつ、新上五島町津和崎郷仲知地区。
浦桑から津和崎方面に車を40分ほど走らせた場所に、ひと気は少なくとも雄大な海に臨む古民家があります。
山添亜理沙さんが6月にオープンした、ロザリオアクセサリーのアトリエ「亜里舎」です。
ロザリオアクセサリー作りのきっかけ
地元の高校卒業後、専門学校と写真館での仕事を経て、20歳の頃に新上五島町に戻ってこられた山添さん。生まれも育ちも、豊かな自然と様々なカトリック文化が点在する上五島「仲知」という地区。現在もそちらを拠点に活動されています。
「上五島へ帰ってきてからはリゾートホテルで仕事をしていたんですが、突然原因不明の脚の痛みに襲われました。病院で診察をしてもらってもはっきりとせず、ついには松葉杖での生活になってしまい……。立ち仕事ができなくなってしまったんです。そんなときに母親が、昔からアクセサリー作りや編み物が趣味だったのと、私が住んでいる地区の性質上、ロザリオを持っている方が多く、その手直しをしている姿を思い出し、これなら私にもできないかな、と思ったのがきっかけです。」
ロザリオアクセサリーへの想い
「結局、松葉杖での生活は6年間続きました。その期間は身体を動かしてできる仕事が限られていたため、ロザリオアクセサリーと向き合う時間になりました。材料の多くは、信者さんが使わなくなったロザリオのパーツです。初めの頃は、信者さんが身に着けていた大切なもの、という認識が強かったので違和感があったのですが、眠らせているのももったいない!とも思い材料として使い始めました。また最近では、ロザリオを身につける信者さんが少なくなってきているんです。そのこともあり、もっと気軽に身につけられるアクセサリーという形にして、若い人にも宗教関係なく楽しんでもらいたいと思っています。作品を作る上では、あえて全く同じような物は作らないようにしています。自分の目で見てぴったり合うものに出会って欲しいですね。」
この場所だからできること
自分の身体と向き合いながらロザリオアクセサリー作りをはじめた山添さん。この「仲知」という場所だからこそできる活動でもあると語ってくれました。
「メインの材料になるロザリオのパーツは、ほとんどがいただき物です。地区の方が、私がアクセサリーを作っているからと持ってきてくださることも多いですし、時には島外からインターネットで私の活動を知ったという人が応援メッセージも添えて材料を送ってくださることもあり、嬉しくなります。こんな風に自然とロザリオアクセサリーの材料が集まるというのは、祈りの地である仲知ならではなんじゃないかと思います。それとアクセサリー作りを始めて、調子が悪かった自分の足が治ったんです。神様からたくさんのお恵みをもらい、導かれているんだなぁと感じましたね。」
念願のアトリエオープンとこれから
初めは苦戦もあったアクセサリー作りですが、作業ペースも上がり今では新上五島町内はもちろん長崎市、さらにはネット販売へと販路も拡大している山添さん。没頭できる仕事場が欲しい!と2019年6月にご自身のアトリエ「亜里舎」をオープンしました。
「アトリエとしてこの場所いいなぁ~とずっと思っていた、昔お店をやっていた建物があったんです。でもそこはなかなか貸してもらえず……。じゃあその隣にある民家は?と思って聞いてみたら、すんなりOKでした。10年くらい誰も住んでいなかった民家なんですが、お掃除をして、展示スペースの場所だけ少し手を入れて。後はほとんど当時のまま活用しています。よく言われるのが、観光客含め人がもっと来やすい町の中心部に開いたらいいのに、という声。でも私自身がこの仲知が大好きなので、ここでやることは譲れなかったんです。それに、人が少ない地区だからこそ人が集まれるような場所が必要だと思うんです。ワークショップを開いて自分の手で好きなようにアクセサリーを作ってもらうのも楽しいですし、観光客の方には五島に訪れた思い出としてアクセサリーを手に取って欲しい。なによりも老若男女問わず、色々な人に立ち寄って欲しいと思っています。」
▲ 自分が生まれ育った新上五島町・仲知地区がとにかく大好きだと語ってくれた山添さん。自宅近くの海を収めたというこの写真は、ご本人が撮影したもの。クリエイターとしての感性はもちろん、自分の好きな場所・人への想いがあふれた優しい空気が印象的でした。
文・フォト:後濱 啓太
fullyGOTO2019秋号掲載
【取材・執筆・掲載】fully編集部