ステンドグラス工房538 店主 濱崎 由美子さん
会堂を彩るステンドグラス、五島を表すモチーフとして使われることも。今回は、そんなステンドグラスを長年作り続けている濱崎由美子さんをご紹介します。
倉庫から工房へ
三井楽半島を海沿いに進むと、防波堤のそばに煉瓦造りの建物が。波の音が心地よいこの場所が、ステンドグラス工房538、濱崎さんの制作場所です。
「この場所の地名は、八の川。538(ごうさんはち)は、五島・三井楽・八の川から取っているんですよ。」ずっと気になっていたこの数字、今回やっと判明しました。地名の頭文字に全て数字が入っているのも、なんだか珍しいです。
「もともとこの場所は、倉庫だったんです。
目の前の海は昔よい漁場で、ブリが良く獲れることで有名で。
自分自身もここのすぐ近くに生まれたので、八の川漁港の倉庫だった頃も覚えています。」いつしか空き倉庫となったこの建物を、24年前に三井楽出身の方が購入。ステンドグラス工房へと生まれ変わります。
当初は、大阪から先生を呼び約9名程の生徒さんがいたそうです。
三井楽教会堂ステンドグラス
「私は工房が出来て2年後から生徒として通いはじめました。三井楽教会堂のステンドグラス制作のプロジェクトが始まり、先生に指導いただきながら当時の生徒たちで6年ほどかけて完成させました。教会堂の右側にはキリスト教の歴史が、左側には、日本、そして五島のキリスト教の歴史が表現されています。」絵の希望は神父様が、デザインは先生が、そして制作は生徒さんたちが行ったステンドグラスは唯一無二。特に袴姿の人が表現されたステンドグラスは、なかなか珍しいのではないかと思います。
きっかけは自宅のドア
「家のドアのガラスの部分が割れてしまって、ここにステンドグラスをはめたいと思ったのがステンドグラス工房に通うきっかけでした。今自宅には、そのドアに加えて、階段の明かりとりやランプなどの作品があります。窓なども、大きさを合わせてサッシに入れ込むことができます。太陽の光が入り込んだ時の、室内に映る色合いや光の表情が変わって綺麗です。自宅の明かりとり窓も、二重サッシの内側が空いていて、そこにステンドグラスを合わせたんです。」ステンドグラスは、大きな建築物の中で見ることが多かったのですが、よくよく考えると、家の小さなインテリアや小窓、もちろん窓ガラスなど身近な場所で使用シーンは多そうです。
濱崎さんのステンドグラス
「今まで作らせて頂いた作品は、みみらくの里さん、遊民さん、そして墓石にもオーダーいただく事もあります。数年前には半泊教会堂の祭壇上のステンドグラスも作らせていただきました。」見せていただいた半泊教会堂のステンドグラスは、色合いもとても綺麗です。「半泊出身の神父様の金祝で、記念にステンドグラスを寄付したいとの希望を受け、制作しました。50周年という事でゴールドを表す為に黄色を、そして海の青、イエスキリストの御心を表す赤など、それぞれの色に意味もあります。
デザインも、三つ葉のクローバーは三位一体を、花十字は信者さんの希望を入れ込んでいます。この教会堂の守護聖人は聖パトリック。アイルランド国の守護聖人でもあります。なので青色はどうしてもアイルランドにゆかりのあるパトリックブルーを使いたくて、特別オーダーして使用しました。」いろんな思いが詰まったステンドグラス、こだわりを伺うと、実際に見たくなります。
ステンドグラス作り体験も
「予約制で体験も行っています。カットされた素材から選んでもらって作ります。値段は作品の大きさで違ってきますが、小さいもので1000円からあります。1対1でできる場合は1時間くらいでできますよ。」選べる素材は、椿の花や写真枠など、旅の思い出などにもぴったりです。もちろん地元の方の体験も大歓迎。「例年、地元の方が多いのは夏休みで、お子さんが工作作りで来られたりもします。」工房の前の海の色も美しく、開けた窓から聞こえる波の音や様々な作品に囲まれた工房内。
制作体験中も、なんだか一つの作品の中にいるような、心地良い時間になりそうです。
ガラスを溶かす機械もあり、ベネチアングラスの素材でもアクセサリーや小物も作っているそうで、焼くと色味が変化する事もあって実験の日々。そして今取り掛かっているのは、大型のティファニーランプ。曲線もあり、型紙通りガラスを切って、やすりがけをして、繋げてと、半年以上かかるそうです。ステンドグラスは、作品に込められた想いや、その手仕事によって、光がより美しく、暖かくなるのだなと感じました。
オーダーも受け付けているので、自宅のインテリアや贈り物にステンドグラスを使用したい方は、是非ご相談ください。
【取材・執筆・掲載】fully編集部
fullyGOTO2020夏号掲載