fullyGOTO2022秋号 表紙の顔 高橋 和希さん
今回表紙を飾ってくれたのは、高橋 和希(たかはし かずき)さん 29歳。千葉県から五島列島福江島に移住して 2年目。10年以上のキャリアを持つ美容師である彼は、その技術や経験を活かし、現在は訪問美容師として働いています。依頼があればどこへでも。フットワークの軽さや人当たりの良さも手伝って、リピーターも増加中。そんな高橋さんに、移住した経緯や現在の暮らしについてお聞きしました。
導かれるように五島へ
高橋さんは、茨城県出身。高校卒業までご実家のある茨城で暮らした後、18歳から28歳までの約10年間、千葉県で美容師をされていました。「5年間ぐらいは勤めでやってましたけど、後半はフリーランスでした。」ほぼ同じ繰り返しの毎日の中で、ふと、どこかへ旅行に行きたいなぁと思い始めます。そんな時、ぼんやり観ていたテレビ画面に映し出された福江島の景色に目が留まります。「多分高浜だったと思いますが、すごく奇麗で、ここに行ってみようと直感で決めました。」福江島に移住することとなる2年前の出来事です。
きっかけは偶然の出会い
初めて訪れた五島福江島。それも人生初のひとり旅。「特に計画も目的もなく、テレビで見た景色の中に身を置いていることに充実感を抱きながら数日を過ごしていました。移住することになるなんて全く考えず。」そんなある日ふらっと入ったカフェでの出会いが、彼の人生を一変することとなるのです。「店のオーナーが気さくな方で、どこからきたの?と話しかけられ会話をしていたら、たまたまその店に居合わせた方が五島市役所の移住担当の方だったんです。流れで移住の話になり、聞いているうちに次第に引き込まれていきました。」高橋さんの中で、何かが動き始めた瞬間でした。千葉に戻ってからも、担当の方とオンラインで何度か面談をし、移住へと気持ちが傾き始めたころ、地元福江島で起業した、同年代の男性を紹介されます。その方は、ご自身も美容師でありながら、美容のトータルプロデュース事業を展開する計画をしていて、その中のひとつである「訪問美容」をやってみないかと誘われます。「正直、美容師はもういいかなぁと思っていたんですが、せっかく美容師であることが導いてくれたご縁なので、引き受けることにしました。」
流れに身を任せて
そのあとは話がとんとん拍子に進み、初めての旅行から1年後の移住に向け準備を始めます。そんな矢先のコロナ禍到来。計画より年1ずれ込みましたが、令和3年8月、晴れて五島市民となりました。初めは移住希望者用の短期滞在住宅に3ヶ月住み、その後タイミングよく空き家バンクで気に入った賃貸物件が見つかり引っ越します。「最初一人暮らしには広すぎるかなと感じていましたが、この4月には千葉から彼女も移住してきたので、二人と犬一匹と、快適な暮らしをさせていただいています。」五島市の人口増加にも貢献してくれている高橋さんです。
訪問美容師として
現在は、主に訪問美容師として、老人ホームなどの施設や、個人宅に出向き、ご希望に合わせたシャンプーやカットを行っています。客層は高齢者や障害のある方、また小さなお子さんや、そのお母さんなど幅広く、訪問先も、福江市街地から遠くは玉之浦まで行くこともあるそう。「それまで訪問美容の経験がなかったので、最初は専用の機械や道具の扱いに苦戦したり、寝たきりの方への対応に戸惑ったりすることもありました。また福江の中心部だと、道が入り組んでいて訪問先までたどり着くのに時間がかかったり、駐車スペースがなかったりと、ちょっとだけ大変なこともあります。ですが、終わった後にお客様から喜んでもらえると、全てが帳消しになりますね。今後も、美容室に出向くのが困難な方の、文字通りかゆいところに手が届くサービスを心掛けていきたいと思っています。」
趣味を満喫できる福江島
趣味は釣りとキャンプ。どちらも思い立ってすぐ実行できるのが島暮らしの醍醐味。「釣りは主に防波堤や岩場などの陸から、ルアー釣りが多いです。イカやカマスなど、その時期に釣れるものを狙っています。キャンプは基本ソロで、釣った魚を焼いたり刺身にしたり。自然の中に身を委ね、ひとり気ままな時間を過ごせるところが気に入っています。」人生とは偶然の積み重ね。予定通りに行かないからこそ、時には流れに任せてみると、色んな偶然が自分が一番心地よい場所へと導いてくれるのかも知れない。誰一人知り合いのいなかったこの土地に、導かれるように移住してきた高橋さんから、そんなことを教えてもらったような気がしました。
【訪問美容サロン サークル】電話:050-5896-2533
【取材・執筆・掲載】fully編集部
【掲載先】fullyGOTO2022秋号