fullyGOTO2021年春号 表紙の顔 チトリ・ビル・バハドゥルさん
今回、春号の表紙を飾ってくれたのは、ネパール出身、26歳のチトリ・ビル・バハドゥルさんです。年齢の割に落ち着きのある、おしゃれでハンサムな彼は、福江港を見守るように建つ、「GOTO TSUBAKI HOTEL」のレストラン、「TSUBAKI KITCHEN」で働いています。日本に来てもうすぐ6年。五島での暮らしは2年になります。遠い国ネパールから文化も気候も生活環境も違う日本へ、彼はどうして来たのか、また五島での暮らしについてお聞きしました。
念願だった日本への留学
彼の生まれ育ったネパールは、インドとチベットの間に位置し、首都はカトマンズ。寺院の他、エベレストがあるヒマラヤ山脈で知られる国です。様々な民族が暮らす多民族国家で、国土の約 8 割が丘陵・山岳地帯。海はありません。そんな祖国ネパールを飛び出し、彼が日本に来たのは 6 年前の 4 月 15 日。ちょうど 20 歳の誕生日だったそうです。それまでネパールの大学で数学を学んでいて、教師を目指していましたが、「留学したい」という気持ちが抑えきれず両親を説得。大学を中退し、3ヶ月間日本語の日常会話を勉強。晴れて念願だった留学を果たすことができました。留学先は、オーストラリアと日本、どちらにするか迷い、暮らしやすそうという理由から日本に決めたそう。初めての日本。最初に降り立ったのは福岡でした。そこで4年間を過ごしますが、初めて見た地下鉄に、一番驚いたと言います。最初の2 年間は日本語学校で学び、後の 2 年間は専門学校でサービス業やホテル業について学びました。「 IT 関連の学科もありましたが、サービス業を選択しました。」ネパールは農業を主たる産業としていますが、ヒマラヤ山脈や、世界遺産に指定された寺院や王宮が並ぶ旧市街など魅力的な場所が多く、観光業も盛んな国。サービス業は身近にあり、自然と興味を持ち始めたと言います。
日本でおもてなしの精神を学びたい
4年間の学生生活を終え、2年前、五島自動車(株)に入社。同じ学校から5人採用され、ツバキホテルに2人、カンパーナホテルに3人が配属になりました。「専門学校を卒業を前に、学校からいろんな企業への紹介があり、ほとんどの友達は福岡に残ったのですが、私は自然の多いところに住みたかったので、五島を希望しました。」
「GOTO TSUBAKI HOTEL」のオープンと同時に入社したビルさんは、オープニングスタッフとして、当初からツバキキッチンのホールを担当。「仕事は楽しんでやっています。みんな親切で優しいので、とても働きやすい職場です。」日本でサービス業を学んだり、実際にサービスを受ける側になって驚いたのは『おもてなしの心』の素晴らしさ。『お客様が第一』という精神は、ネパールではあまり根付いておらず、驚きと同時に、この日本特有の精神を学びたいと、強く思ったそう。
五島の印象
「ネパールは山に囲まれていて海がないのですが、五島はどこを見ても海!新鮮ですね。五島に来て、一通り観光に連れて行ってもらったのですが、一番印象に残っているのは『大瀬崎灯台』。素晴らしい眺めに感動しました。あとは、秋には上半分が茶色になる珍しい風貌の『鬼岳』にも驚きました。」
日本に来てもうすぐ6年の彼。日本語もだいぶ話せるようにはなりましたが、五島弁には苦戦している様子。食で言うと、うどん大国である日本で、初めて口にした『うどん』も印象的だったよう。「福岡のうどんは太くて食べられなかったのですが、五島に来て、細くてコシのある五島うどんは食べられるようになりました。あごだしもとても美味しいと感じます。そして、ネパールでは生魚は殆ど食べませんでしたが、五島に来てよく食べるようになりました。青魚は得意じゃないですが、イカ、ハマチ、エビが好きで、刺身が食べたくなったら近所の料理屋に行くこともあります。」気候は、1年の半分は半袖でも過ごせるネパールと随分違い、五島は寒さが厳しいと感じるそうです。
五島をもっと楽しみたい
「お休みは月に6日〜7日ありますが、友達と殆ど合わないので、基本一人で過ごすことが多いですね。サッカー観戦をしたり、ネパールのユーチューブや映画もよく観ます。また近所に買い物に行って料理をすることもあります。」好きな料理はやはりカレーだそうで、スパイスを使ったカレーをよく作るとのこと。国際免許がないため、基本移動は徒歩。「住まいと職場が近く、近所にスーパーもあるので生活には困りませんが、運転ができれば、本当はドライブとか、五島のいろんな所へ行ってみたいです。二次離島や上五島にもいつか行ってみたいなと思っています。
今はコロナ渦で、福岡に住む友達にもなかなか会いに行けないので、五島に同世代の友達が欲しいなと思っています。」
大切な家族と将来のこと
ビルさんは5人兄弟。お姉さんが3人と妹さんが1人。長男であり一人息子でもある彼は、いずれは故郷に帰り、両親の面倒をみると心に決めているそう。「ネパールでは、よっぽどの理由がない限り、両親は家で最後まで面倒をみるというのが普通です。小さい頃からそう意識しながら生きて来ました。」実家に仕送りもしているという家族思いの彼。ネパールは成人年齢が16歳と、日本人より一足早く大人になるとは言え、一人息子を見知らぬ土地へ送り出す家族にも、勇気が必要だったと思います。家族の絆が深く、信頼と支えがあるからこそ、彼は笑顔で頑張れているんだなと感じました。これからも五島を思い切り楽しんで、多くの魅力をネパールに発信して欲しいですね。