fullyGOTO2021年夏号 表紙の顔 佐々木 雄大さん
今回、夏号の表紙を飾ってくれたのは、上五島在住の佐々木 雄大(ささき ゆうだい)さん。 気さくで明るく、話し上手な彼は、埼玉県出身の 26 歳。現在、新上五島町有川郷のキャンプ施設「有川青少年旅行村」にオープンしたカフェ「Re-harmo Cafe」の運営や、キャンプ場の予約管理業務を行っています。東京でやっていた飲食業のコンサルやマネジメントの経験から得た経営スキルを活かし、カフェメニューの考案から、調理、接客、野菜作りまでマルチにこなす多彩な彼に、移住した経緯や、人生観などをお聞きしました。
縁が繋いだここでの生活
東京で、飲食業のコンサルタントや農業従事者の支援をフリーランスで行っていた佐々木さんは、2018年月、旅行で上五島を初めて訪問。漁業体験や郷土料理にふれ、この島に魅せられたと言います。
その約1年後、以前から親交のあった合同会社snufkiins(東京)の代表が、新上五島町有川郷のキャンプ施設「有川青少年旅行村」の指定管理者になることが決まり、「Re-harmo」と名を変え運営を開始。佐々木さんはそのプロジェクトメンバーとして抜擢されます。すっかり上五島ファンになっていた佐々木さんは快く引き受け、2019年12月、新上五島町へ移住。プロジェクトの核となる「Re-harmo Cafe」オープンに向け、他のスタッフとともに準備を開始します。
令和2年4月4日、晴れてオープンしました。
26年の人生で見つけた価値観
これまでの道のりや、人生観を聞いてみました。佐々木さんは埼玉県出身。ご両親と、2歳年上のお姉さんとの4人家族。お父様の仕事の関係で、4歳から8歳までフィリピンでの海外生活を送ります。
その後日本へ帰国しますが、人格形成の重要な時期を海外で過ごした彼は、周囲とのギャップを感じる事が多く、日本の小学校に馴染む事ができなかったそう。
その一方で、中学や高校では海外生活で培われたコミュニケーション能力や、好奇心、世界感といったものが逆に活かされ、必然的に人前に出たり、大勢の前で話す機会が増えるなど、知らず知らずに経験が積まれ、今では人前で緊張することがなくなったと言います。大学卒業後はそのまま独立。フリーランスでマネジメントやイベント企画、広告系プロモーションなどを手掛けていましたが、全てが順調だったわけではなく、辛い時期もあったと言います。「20代前半は、思い通りに行かず悩むことも多かったですね。」と当時を振り返ります。しかし彼は、どんな経験も、自分を形成する大事なコンテンツと捉え、前を向きます。「それまで、うまくいかないことを人や環境のせいにしていました。自分の意思で選択すれば、うまく行かなくても、自分で全責任を持つことができます。結局、それが一番幸せになれる生き方ではないかと今は思っています。自分が幸せでなければ人も幸せにできないですからね。」と笑顔で話す彼。
プロデューサーは自分自身
そんな佐々木さんには、カフェの運営の傍ら、ライフワークの1つとして取り組んでいることがあります。それは「地域の日常を撮る」こと。作り手を主役にした、ドキュメンタリー動画を、時間を見つけてはこつこつと撮りためています。「今撮っているのは昔ながらのかんころ餅作りや、畜産業者の日常などで、観光で訪れただけでは見る事ができない、住んでいるからこそ見れる、地域のコアな部分を、インターネット等で紹介しながら残していきたいと思っています。」そして3つあるという『20代のうちにしたいこと』を教えてくれました。1つは日本横断、そして世界一周、もう1つは海外で働くこと。そしてその全てに共通するキーワードは『食』。「幼い頃から興味のあった分野で、これまでの活動や仕事は全て『食』がベースになっています。今後も色んな場所に住み、多くの人に会い、食を通じた自分の活動をライフワークとして世界に発信し続けたい。今は自分で自分を売っていく時代。自分のプロデューサーは自分自身自分だと思っています。」
プロとしてのこだわり
佐々木さんたちの洗練された感性で、生まれ変わった「Re-harmo」。そこで出される週替わりのワンプレートランチやカレー等のレシピは、全て佐々木さんが考案。なんとスイーツまでも手掛けます。中でも月替わりのタルトは人気があり、午前中で完売してしまうこともある程。
また、コーヒー豆にもこだわっていて、焙煎、管理が行き届いたスペシャリティコーヒーを取り寄せ、丁寧なハンドドリップで提供しています。また、素材となる野菜も栽培していて、畑を借り、スタッフで管理をしているというから驚きです。
取材当日、定休日にも関わらず招いてくれたカフェでいただいた、ハンドドリップのコーヒーと、お手製のオートミールクッキーのなんと美味しかったこと。また訪れたい場所の一つになりました。
移住者が続々と増えている五島ですが、様々な感性や価値観を持つ彼のような若者たちが、島に新しい風を吹き込み、島の人々と一緒に楽しい日常を作っていく。
明日も分からない時代だからこそ、そんな『今』を楽しむことの大切さを教えてもらったような気がしました。
Re-harmo Cafe
住所:〒 857-4211
長崎県南松浦郡新上五島町有川郷 2473
有川青少年旅行村管理棟内旧食堂
電話:0959-42-5557
営業時間は午前10時~午後8時(季節により変動)
佐々木雄大さんが制作しているYOUTUBEチャンネル「旅声チャンネル」
【取材・執筆・掲載】fully編集部
【掲載先】fullyGOTO2021夏号