ユトリパンコヤ*ブランブラン
伊藤 砂織さん
土曜日の朝十時、三井楽のとある交差点に行列が。
それぞれが談笑しながらお店の中を覗くその先には、もっちりと膨らんだベーグルが並んでいます。
今回ご紹介する輝いている人は、三井楽にできたベーグル店「ユトリパンコヤ*ブランブラン」の店長伊藤砂織さんです。
白神山地の酵母との出会い
OL時代に通い始めたパン教室で出会った白神こだま酵母。秋田県と青森県の県境にまたがる白神山地の腐葉土から生まれた、製パンに適した優秀な天然酵母です。
「この酵母は誕生した過程がすごく神秘的で。特徴の面でも、砂糖や油脂が少なくても、甘みが出てふっくら膨らむ所がとても魅力でした。最初は一般的なパンで事業計画も作ったんです。でも、卵・乳製品・バターなどの油脂を使わないベーグルのみを扱おうと決めました。」
千葉で開業した8年半前
千葉で暮らしていた伊藤さんは、2009年にベーグル店を千葉で開業。忙しい日々を送っていました。
「子供を見る時間がなかなか取れなかったり、もどかしさもあって。もう少し、ゆとりのある生活をしたいなと思っていました。その中で、引っ越すなら五島一択で考えていたので、子供がまだ3歳のこのタイミングがいいのかなと。」
巡り合ったのは旧床屋さん
「店舗探しの条件は、店舗と自宅が同じ建屋であることでした。ゆっくり子育てとパン屋ができたらいいなと思っている中で、この場所を紹介していただいて。海も公園も歩いてすぐに行けて、スーパーも近くにある環境の良さから決めました。
前に床屋さんだったので、名残も結構残っていて、それがそのまま使えていたりします。」
お店を入って右側には、待合スペースだった名残が。小さい子供が絵本を読んで待っていたり、買い物の後ちょっと座っておしゃべりをしたり、お店の形が変われど、人の集う場所は変わらず残されています。「本当は、もう少しお客様とゆっくりお話したいのですが、ありがたいことにオープンからたくさんの方に足を運んでいただくので、お待たせしないようにとレジ打ちで精一杯になってしまって……。
これから、もう少し落ち着いてきたらいろんな方ともっとお話をしながら、お店も変化していければと思っています。」
ベーグルができるまで
ショーケースいっぱいに並ぶベーグルは種類も豊富です。しかも、どれも魅力的な内容で悩んだ挙句「全部!」と言ってしまいそうなほど。この多種多量のベーグルを、現在は伊藤さんお一人で材料の調達や仕込み、製造をしています。
「数種類のパン生地を前日に仕込みをして、店頭では約15種類のベーグルを販売しています。千葉のお店はスタッフ入れて4人でやっていたので、一人作業がまだ効率よくできていなくて……朝から晩までかかってしまったりもしています。
次の日は早朝から焼く作業があって、包装して開店。
主人にもたまにレジを手伝ってもらって助かっています。」
これから楽しみがたくさん
「食材も、地元のものをもっと使っていきたいので、いろいろな生産者の方ともお会いしていきたいです。五島産の青のりも探し中です。鯖の燻製を使ったり、和ベーグルの種類も増やしていきたい。これから余裕が出てきたら、パン教室もやっていきたいなと思っているので、そういった中でもいろんな方とお話できたらいいなと思っています。」
今回の取材で見た、ベーグルを作る真剣な眼差しと、これからの事を語る楽しそうな表情。この伊藤さんの魅力は、ベーグルを食べると、さらに納得。幸せな気分になる味でした。
fullyGOTO2018冬号掲載
【取材・執筆・掲載】fully編集部