fullyGOTO 2020年 春号
表紙の顔 長尾 愛里さん
今回春号の表紙を飾ってくれたのは、長尾愛里(あいり)さん 28歳。
長崎で生まれ育ち、大学卒業後も地元で保育士をしていました。ダンスと出会ったのは5歳の時。それ以降ずっと彼女の側にはいつもダンスがあったと言います。ダンスを通じ現在のご主人と出会い、一昨年の10月に結婚。その後五島に移住し、現在はご主人が立ち上げたダンススクール「Raum Jack(ラウムジャック)」(zeroから名称変更)でガールズヒップホップを教えています。趣味は「ダンスと旅行」と言うほどのダンス好き。
小柄でキュートな愛里さんにお話をお聞きしました。
- ダンスが背中を押してくれた
「母や祖母が日本舞踊や民踊、バレエをやっていたので、音楽や踊りというものは小さい頃から身近にありました。5歳の時、姉に付いて一緒にジャズダンスを始めたんです。」ここから愛里さんのダンス人生がスタートします。10年間ジャズダンスを習った後、高校から本格的にヒップホップやR&Bに転向。
「全てのダンスの基本と呼ばれるジャズダンスを小さい頃からやっていたので、すんなりと入っていけました。」その頃エグザイルなどヒップホップダンスを踊るアーティストの人気が出始めていましたが、『ヒップホップダンス=チャラチャラしている』というイメージから、『やること』に対してはあまり寛容でなく、自由にできる環境ではなかったと言います。「まだダンス部なんてなかったですし、同好会に入り、車の窓ガラスを鏡代わりに練習していました。高校が進学校だったため勉強も大変で、模試と発表会が同日だった時は流石に先生からダンスをやめろと言われたこともありました。」ダンスへの理解がまだまだ低く、肩身が狭かった高校時代。それでも決してやめる選択をしなかった愛里さん。学校以外でも、2ヶ所のダンススクールに通い、ひたすらダンスへの情熱を燃やしていきました。その一方で、同級生たちからは一目置かれ、学校の体育祭などではダンスの振り付けを任されたりすることも。
「実は人見知りで初対面だと緊張してしまう性格なんですが、ダンスを続けていたことで、人前に立ったり、人をまとめる役目を担う機会も多く、そういう事も自然とできるようになっていました。」
- ダンスを教えるということ
「保育士をしていた頃、振り付けを考え子供達と一緒に踊っていましたがダンスを教えるのも好きでした。」そう話す愛里さん。
結婚が決まり、五島への移住するまでの半年間は、指導者側の視点でダンスを習ったといいます。「5クラスのレッスンを受けアイソレーション(基本的な動きの練習)の指導法や、実力レベルに合わせた振りの構成の仕方などを学びました。」現在、毎週日曜日にダンススクールで子供達に教えていますが、隔週土曜日には公民館講座で大人の方にも教えています。
「公民館講座は50代〜60代の方もいるんですが、世間話をしたりゆったりとした雰囲気の中、楽しく練習しています。3月の発表会に向け、皆さん毎回まじめに復習してきてくれるので嬉しいです。」「ダンススクールの子供達も、年間を通しイベントで踊ったり、年に1度は長崎で行われる大きな発表会にも出ているので、常に目標を持って練習に励んでくれています。」
基本ご主人は男の子のクラス、愛里さんは女の子のクラスを担当。女らしい動きを取り入れたガールズヒップホップを教えていますが、愛里さんの踊る姿は力強さの中に妖艶な雰囲気が漂い、ロングヘアの俊敏な動きがそれを一層引き立たせます。
指導者が憧れの存在であるからこそ、生徒達のモチベーションに繋がるのかも知れません。
- 今、思うこと
「私の頃とは違い、今はダンスが学校でも必須科目になりダンスへの見方や環境が変わってきています。でも、学校の授業でその楽しさに気付いても、それ以外の場所で続けられる環境がなければせっかく芽生えた感情は流されてしまい才能も伸ばせません。スポーツは苦手でもダンスは好きという子もたくさんいます。
卒業して島外に出ればいくらでもダンスができる環境は整っていますが、『今』感じた『楽しい』を見過ごさなくていい環境がもっと身近にあったら・・その手助けができたらいいなと思っています。」「今教えている子供達の殆どは高校を卒業したら島外に出てしまうと思いますが、大人になってもダンスを続けてくれたら嬉しいですね。そしていつか五島に戻ってきて、教える立場になってくれたらもっと嬉しいです。」と笑顔で話します。
- 親切な人たちと綺麗すぎる海が大好き
五島の魅力はなんですか?との問いに真っ先に答えてくれたのは『人柄』
「五島の方は社交的で、親切で、いつも気さくに話掛けてくれます。
ダンススクールの保護者の方々も本当に協力的で、いつも何かと助けられています。」「また音楽好きな方が多いのにも驚きました。」音楽関係のイベントにご主人と共に参加することも多く、音楽やダンスを通じコミュニティが広がっているとのこと。
「異業種間の繋がりがあり、みんなで一体となって五島を盛り上げようという意識の高さも感じますね。」昨年、ダンス界で著名な菅原小春さんが来島した際も、アシスタントとしてイベントに携わったという愛里さん。
「本当に夢のような時間でした。こんな貴重な経験ができたのも五島に移住したからですし、色んな方が連帯感を持って協力し合い、楽しんでいる姿に感動しました。」音楽は人と人とを心で繋ぎ、元気にする力があることをつくづく感じると言います。「そして何と言っても海が綺麗!
長崎は五島と近いですが、やはり五島の海は長崎と全然違いますね。特に高浜の魚藍観音像からの眺めは最高で、一番好きです。」
「まさか五島に住むことになるなんて思ってなかったんですが、亡くなった祖母が五島生まれだったことを、主人と知り合った後に知ったんです。きっと五島に縁があったんですね・・」
ご主人と共に五島のダンス好きな子供達の希望の光となった彼女。お話を聞いて、五島の宝だなぁとしみじみ感じました。
fullyGOTO2020春号掲載
【取材・執筆・掲載】fully編集部